黒沢咲。TEAM雷電所属のMリーガーだ。
その麻雀は個性的な打ち手が集まるMリーグの中でも異端だ。副露率は1桁台の全く鳴かない麻雀で、高打点の手をアガりまくって勝つ。
Mリーグは全体的に副露率が低い場ではある。とはいえ、ここまで低くて勝てるというのは、普段鳴き麻雀で戦っている私からすると理解不能だ。
一体この麻雀はいかにして生まれたのか?黒沢咲の麻雀人生に迫っていこう。
基本プロフィール
生年月日:10月6日(年齢非公表)
出身地:東京都
血液型:A型
学歴:上智大学卒業
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麻雀との出会い
3人姉弟の長女として生まれた黒沢。祖父母と妹とよくドンジャラ*1で遊んでいたという。負けず嫌いで、勝つまで止めなかった。
麻雀を初めて知ったのは大学生のとき。同級生がやっているのを見て、「ドンジャラみたいでおもしろそう」と役もルールも知らないままやり始め、急速に夢中になっていった。
大学卒業後は人事コンサルティング会社に就職。とにかく仕事を早く終わらせて、残業をせずに仕事終わりに麻雀を打ちにいく毎日だった。
仕事をする上でも流れを大事にしており、重要な案件は流れがいいと感じられた時に行うように意識していたという。
仕事帰りによく通っていた麻雀店には、現Mリーガーの二階堂姉妹の父親が勤めていたこともあり、二階堂姉妹がゲストで来ることもあった。
二階堂姉妹の父親から、亜樹と瑠美がプロになればいいのに、と言っていたことを知らされ、プロ入りを意識するようになった。
麻雀プロになりたいと両親に相談したところ、頑張って、と背中を押してくれたこともあり、2005年に日本プロ麻雀連盟に21期生としてプロ入りした。
家族関係
黒沢にはある噂があった。父親が某ホテルの社長という噂だ。
黒沢の打ちスジはセレブ打法と呼ばれるが、実際の黒沢もセレブ感がすごい。
そこから立った噂だったが、本人がその噂を否定している。どうやら黒沢の父はその某ホテルの社長が同姓同名らしく、そこから噂になっていったようだ。
ただ黒沢の父は社長であることは間違いないらしく、社長令嬢である黒沢は実際にセレブであることは間違いない。
プロ入り後の活躍
平日は定時まで働き、その後はひたすら麻雀に費やす。そして週末はリーグ戦という中で頭角を現し、2008年には女流プロナンバー1を決める「プロクイーン」のタイトルを獲得。
翌年には連覇を達成し、女流プロとしての階段を一足飛びに駆け上がっていった。
麻雀プロとしての仕事も増えてきたため、会社を依願退職して麻雀プロ1本に絞り、MONDO TVの女流モンド杯など、メディア対局にも出演するようになった。
セレブ打法の確立
ただ順風満帆だったわけではなく、タイトル戦で勝利はほぼ確実というところから大逆転負けを喫することも何度かあった。
己のスタイルを確立することが出来ず、模索していた。自身で鳴くことが下手だと自覚しており鳴きの勉強をしていたが、鳴くと良くない結果になることが多く、どうすべきか迷走していた。
転機が訪れたのは2015年。黒沢が鳴きを止めたら、大変な打ち手になると前原雄大プロが言っていた…という話を先輩プロから聞いた。
前原と言えば鳳凰位や十段位を複数獲得し、Mリーガーにも選ばれていたトッププロ。この一言で、鳴きに対する迷いが吹っ切れた。
そして出来ないものや足りないものを追い求めるよりも、自身が極めたいメンゼンを軸とした高打点スタイルを磨き上げる覚悟ができた。
あえて「捨てる勇気」を持つことで、今の黒沢のセレブ打法が確立されていったのだ。
そして2018年にMリーグドラフトでTEAM雷電から3位指名を受けてMリーガーとなった。
Mリーグに選ばれて以降も、2019年には自団体のリーグ戦の最高位であるA1リーグに昇格。2020年には自身初めてとなる最強戦ファイナル出場権を得るなど活躍を続けている。
結婚・出産
2017年8月、黒沢は子宮筋腫*2の手術を受けた。
相当の痛みがあったが、この痛みから復活できたらやろうと思えばなんでも出来るという気持ちになり、手術後はまるで憑き物が取れたような感覚があった。
そして麻雀も恋愛も、なぜあんなに細いことに悩んでいたんだろう、と思えるようになった。
手術前は「結婚は今世では無理かも」とネガティブにとらえていたが、手術後に出会いがあり、2019年に結婚と妊娠を発表。
同年の7月2日には帝王切開で第1子を出産したことを自身のブログで報告した。出産から3カ月後に開幕を迎えたMリーグ2020シーズンにおいては家族のバックアップに支えられ、子育てしながら参戦している。
YouTube活動
黒沢は2020年6月よりYouTubeチャンネルを解説。
麻雀の動画ももちろんあるが、黒沢プロのプライベートな面を動画にしたものが多い。
チーム雷電のチームメイトも時たま出演しているので、萩原、瀬戸熊、本田のファンの方も一度見てみてはいかがだろうか。
その他Mリーガーの方のチャンネルはこちら
こちらのページで他のYouTubeを開設しているMリーガーをまとめている。興味のある方はこちらもどうぞ。
小説
自身初となる小説「渚のリーチ!」が2月26日に発売することが発表された。
オファーをいただいて3年半以上。やっと、やっと😭
— 黒沢咲⚡️ (@kurosawasaki) February 2, 2022
河出書房新社さんより、麻雀青春小説「渚のリーチ!」が発売されることになりました!
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新人女流プロの「大地渚」が、会社員と麻雀プロを両立しながら成長し、さらには大規模なナショナルリーグに挑んでいく様子を描いている。
これは黒沢の麻雀人生によく似ており、ある種自伝的作品でもあるのかもしれない。
Mリーガーとしての活躍
黒沢はMリーグ初年度の2018から活躍。個人スコアは21人中7位で雷電の瀬戸熊、萩原がマイナスのスコアの中、唯一プラスで終了した。
2019、2020でも29人中8位、30人中7位でプラスポイントをマークしており、実質的にチーム雷電のエースとして活躍している。
2021シーズンはマイナスポイントに終わってしまったが、それでもチーム内では一番マイナスが少なかった。
雷電は全チームの中で唯一ファイナルに進出していない。来期以降なんとかファイナル進出できるよう頑張って欲しい。
個人成績
2018シーズン
レギュラーシーズン:+116.9
チーム成績
レギュラーシーズン:7位敗退
2019シーズン
レギュラーシーズン:+150.5
セミファイナル:+45.7
チーム成績
レギュラーシーズン:5位
セミファイナル:6位敗退
2020シーズン
レギュラーシーズン:+193.3
セミファイナル:-31.0
チーム成績
レギュラーシーズン:6位
セミファイナル:6位敗退
2021シーズン
レギュラーシーズン:-148.8
チーム成績
レギュラーシーズン:8位敗退
多井隆晴の天敵
多井隆晴が運営するYouTubeの中で女流が苦手だという話をしていたのだが、その中でも特に苦手にしているのが黒沢である。
多井はMリーグで通算プラス1000ポイントをマークするほど、毎年のように活躍を見せているが黒沢には大きく負け越している。
ちなみに黒沢のチャンネルでそれに対するアンサー動画をアップしているので、こちらもご覧いただきたい。
チームメイト
萩原聖人
Mリーガーと俳優の二足のわらじで活躍する麻雀プロ。Mリーガーになるためにプロ入りした経歴を持つ。
瀬戸熊直樹
連盟のトップタイトル「鳳凰位」を3期獲得、さらに十段位を3連覇。最高位戦のタイトルである發王位も1期獲得など、連盟のトッププロ。さらに2021年最強戦優勝の実績が加わった。
本田朋広
EX風林火山オーディションに参加しており、それは勝ち抜けなかったが、そこでの活躍などを評価され雷電に指名された。
日本プロ麻雀連盟の北陸支部に所属し活躍していたことから「地方の星」と呼ばれている。
黒沢の雀風
副露率1桁の麻雀
副露率が8%を切る。1半荘で1回も鳴かないということもザラ
私自身の麻雀感覚からすると、あり得ない打ち方。それがこの黒沢咲である。
一般的な副露率というのは20%~35%といったところであろうか。
普通はあまりに鳴かないと、手数が減ってジリ貧になり負けるというパターンが増えるはず。
しかし、黒沢咲はMリーグで勝ち越している・・どころか、通算スコアは+460.7ポイントで堂々の3位である。
小林剛プロを参考に鳴き麻雀を標榜している私としては、何故このスタイルで勝てているのか、非常に理解に苦しむところがある。
それでもデータは嘘をつかない。勝ち越しているからには何かの部分で他のMリーガー達を圧倒しているはずである。
高打点に特化した「黒沢ブランド」
黒沢咲プロの優れている点は、「高打点に対する嗅覚」と、「高打点に向かってぶれない打ち方」であると考える。
黒沢プロの麻雀は、いわゆる「セレブ打ち」と呼ばれる、異常なまでの打点志向の打ち方である。
以前、黒沢プロの麻雀を見ていてチーテンのマンガンを取らずに手を進めたのを見て腰を抜かした。自分の中には選択肢すら浮かばない一手である。
ときにはそんな手すら鳴かずにハネマン、倍満という最高形を狙う。ここまで打点に拘った打ち方も珍しい。
おそらく、自分の中にこの手はここまで仕上げるというイメージがはっきりとあるのだろう。そしてそこに妥協しない。
また、高打点にするための手牌進行もすごい。
「こう打ったら広いが安くなることもある。」という選択を意図的に避けている節がある。良形や手役狙いのシャンテン戻しも散見される。最高形を狙った麻雀だ。
これを毎回のようにやられると、周りも警戒しないわけにはいかない。
特にMリーグのような同じ相手の何回も打たなければならない舞台では、自分の打ち方を押しつけることで相手の打ち方に制限をかけることが有効になりやすい。
これが「黒沢ブランド」である。
どこからでもトップを取りに行ける破壊力を持った打ち手といっていい。
そして、この打ち方がトップ取りが有利なMリーグルールにはマッチしている。
Mリーグルールはトップ1回、ラス1回ならプラスポイントになる。この大ぶりな麻雀がうまく適合している。
最強の打点志向。黒沢咲プロの麻雀は面白い。
他のMリーガーについての紹介はこちら!
Mリーグを戦っている32名のMリーガーについて、解説記事を書いている。Mリーグに興味のある方は是非こちらもご覧いただきたい。
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